動物福祉

動物福祉(どうぶつふくし)は、人間が他の動物に対して与える痛みやストレスなどの苦痛を最小限に抑えようとする考えのことです。
家畜のと殺、動物実験、動物園での飼育など、人間の利益のために動物本来の特性や行動、寿命などを大きく規制していることは多くあります。
こうした利用を認めつつも、飼育やと殺などの過程で動物の感じる苦痛の除去などに極力配慮しようとする考え方です。
実際に行われる例として、動物園や水族館などの公の飼育施設では、動物福祉の考え方を取り入れて飼育や展示方法を見直す動きが活発化しています。
また、家畜のと殺においては、極力苦しませない方法が要求・実行されており、捕鯨においてもその見地から絶命させるまでの時間が短い電気銛が復活しました。

動物福祉の考え方

動物福祉の考え方は、人間が動物を利用することは許しているので、動物の権利運動(アニマルライツ運動)とは違います。
また、主観的ではなく客観的な評価を行うため、動物愛護運動のような感傷に訴えるものとも異なってきます。
現在、日本で最も一般的であるといえる動物愛護思想は多くの場合、家庭動物(ペット又はコンパニオンアニマル等)だけを対象としていますが、私たちが扱う動物福祉思想は、家庭動物の福祉はもちろんのこと、展示動物、畜産動物、実験動物、そして野生動物の福祉についても考えています。

動物の権利論は、人間が動物を利用することを否定しているため、私たちの食料になる畜産動物や医学の進歩のために使用される実験動物を殺すことについて批判的な態度をとります。
しかし、動物福祉的な考え方では、動物が人間の利益のために殺されることは認めています。
動物福祉は動物が生きている間、幸せに暮らせるようにすることを目的としていますから、例えば肉になるブタを広い土地で飼育するとか、マウスを実験で使用するときに苦痛を与えないようにするなどの配慮が、動物福祉的な考え方といえます。